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第4号、2010年04月15日発行 目次
無断転載禁止。著作権は各著者にあります。
  1. 巻頭言:中国は日本や韓国に先駆けて、ASEANと自由貿易協定を締結
  2. 鳩山新政権の理念、政策およびそれが日中関係に及ぼす影響 
  3. カザフスタンとウズベキスタンの最新経済動向と課題
  4. 内戦の地獄から経済的奇跡へ? カンボジア経済の今―数字の裏を読む
  5. アジアの政治・経済動向(3) インドの自動車産業(第3回)
  6. ニュースの裏を読む(4) 人民元切り上げ問題
  7. 編集後記
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I. 巻頭言:中国は日本や韓国に先駆けて、ASEANと自由貿易協定を締結 (印刷用pdf)
童 適平 Tong Shiping
アジア近代化研究所研究員
明治大学法学部教授、経済学博士

 世界のさまざまな地域でFTA(自由貿易協定、あるいは場合により経済連携協定EPA)が締結される中で、2010年1月1日から、約10年間にわたる交渉を経て、中国とASEAN(東南アジア諸国連合)とのFTA(自由貿易協定)が発効し、中国‐ASEAN自由貿易協定が正式にスタートした。その祝賀行事が1月7日に中国広西チワン族自治区南寧市で、双方の関係者が集まって盛大に行われた。中国とASEANとのFTA締結は長い将来に亘って大きな意味を持つ、画期的なできごとといえよう。これは他のアジア諸国―例えば日本や韓国―やアメリカなどにとっても、重要な意味を持つものと思われる。
 承知の通り、中国‐ASEAN自由貿易協定は人口約19億人、GDP(国内総生産)総額約6兆米ドルと約4.5兆米ドルの貿易額を擁する、経済成長著しい地域を対象にしており、中国―ASEAN自由貿易協定が貿易や直接投資などの拡大を通じて、経済成長をさらに促進する可能性が高まる。
 1997年のアジア金融危機以後、中国政府首脳は率先してASEAN諸国に自由貿易構想を提案し、2002年にはすでに、中国とASEANの間での自由貿易協定を内容とする「中国‐ASEAN全面経済協力枠組み協議」が調印されている。中国政府商務省によれば、その後、双方の経済貿易関係は急速に進展した。つまり、2006年に双方の貿易額は2,000億米ドルを突破し、2008年には双方の貿易額は更に2,311億米ドルへと増加した。中国はASEANの第3の貿易相手国となり、ASEANも中国の第4の貿易相手国となった。2003年から2008年までに、ASEANの対中直接投資は29.3億米ドルから54.6億米ドルへと2倍近くに増加した。中国の対ASEAN直接投資も2.3億米ドルから21.8億米ドルに急増した。こうして見ると、双方にとり、このFTAがいかに大きな意味を持つかが分かる。
 中国とASEANのFTAが発効した後、中国はASEANの旧加盟6カ国(シンガポール、マレーシア、インドネシア、タイ、フィリピン、ブルネイ)との間に、90%以上の商品に対する関税がゼロになった。残りの新加盟4カ国(ベトナム、ラオス、カンボジア、ミャンマー)との間でも、2015年には同じ目標を実現する予定である。当然のことながら、今後、中国の工業製品の対ASEAN 輸出、ASEANの農産品の対中輸出は、いずれもいっそう加速するであろうこと、また大量の中国観光客が観光資源の豊富なASEAN諸国を訪れるようになること、などが予想される。
 中国は既にチリ、パキスタン、ニュージーランド、シンガポール、ペルーともFTAを締結している。オーストラリア、湾岸協力会議、アイスランド、ノルウェー、南部アフリカ関税同盟ともFTA交渉を進めており、インド、スイス、モンゴルともFTA交渉可能性に関する研究段階に入りつつある。
 中国のほかに、日本も韓国もASEANとFTA交渉を進めており、韓国‐ASEAN自由貿易協定は2011年に、日本−ASEAN自由貿易協定は2012年にスタートする予定である。予定通り実現すれば、アジアでの三大自由貿易協定が締結されることとなり、それが "ASEAN10+3"の形で東アジア自由貿易地域まで発展することも予想できる。そうなれば、ASEANを核として、鳩山首相が打ち出している東アジア共同体構想の実現可能性も少しずつ増して行くように思われる。
 東アジア共同体構想の実現に当たっては、日中両国の信頼と協力関係の構築が不可欠である。今回の世界同時不況を通じて明らかのように、日本にとって中国経済の重要性は今後ますます高まるであろう。2009年の輸入においても、輸出においても日本にとって中国は最大の貿易相手国となった。中国は安い労働力だけでなく、市場としても不可欠の存在となった。一方、中国経済も輸出依存型成長から環境重視のバランスの取れた成長モデルへと変革すべき課題を抱え、また、中国経済のプレゼンスが高まるに連れて、大国として国際舞台で行動するにあたり、国内の経済だけでなく社会全体の近代化、さらには国際化にも直面することになろう。その場合、先輩としての日本は技術というハード面と近代化社会のルール作りというソフト面で、豊富な経験を積んできたため、中国の近代化には日本の経験が大いに役立つのではなかろうか。その意味でも、さまざまな面で中日関係がますます深化し、また早急に中日間でのFTAが締結されることを期待したい。


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