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第2号、2009年12月01日発行 目次
無断転載禁止。著作権は各著者にあります。
  1. 巻頭言:近代化の象徴としての超市
  2. 中国農村の家電消費の現状と「家電下郷」政策
  3. 中国で見られる「地王争奪戦」
  4. アジアの政治・経済動向(1) インドの自動車産業(第1回)
  5. 東マレーシアの食料生産と環境問題の近況報告
  6. ニュースの裏を読む(2) 「東アジア共同体」はどうすれば実現できるだろうか
  7. 編集後記


I. 巻頭言:近代化の象徴としての超市 (印刷用pdf)

谷口 洋志 Taniguchi Yoji
アジア近代化研究所理事
中央大学経済学部教授、博士(経済学)

 かつての日本において、スーパーマーケットと言えば、個人商店よりも大規模で、値段が安く、品揃えが豊富で、斬新な雰囲気を持ち、消費者にとってはどちらかと言えばプラス・イメージの多い存在であった。もちろん、個人商店より遠い場所にあるとか、行列してレジに並ぶとか、あるいは大規模小売店舗による個人商店の駆逐といったマイナス面も存在した。
 中国では、日本のスーパーマーケットに相当するものは「超市」と呼ばれる。超市という表現は、英語を不完全なカタカナに直しただけの日本の翻訳(?)に比べると、実に見事に短い言葉で的確に訳した表現である。この超市は、個人商店や露店より大規模で、品揃えが豊富で、斬新な雰囲気を持つ一方、やや遠い場所にあるとか、行列してレジに並ぶといった特徴をもつことでは日本のスーパーマーケットと共通する。しかし、値段は、と言えば、便利店(コンビニエンス・ストアを意味する中国語)より安いものの、個人商店や露店よりも高い。
 日本におけるスーパーマーケットと中国における超市の誕生と普及・拡大は、市場経済化と近代化の過程でもあった。第1に、取引形態が従来の相対取引(対面販売)から市場取引へと変わった。第2に、取引価格が従来の交渉価格から定価へと変わった。
 中国に行って「ぼられた」と騒ぐ人を見かけるが、それはある意味で自業自得であろう。「ぼられる」のは、相対取引・交渉価格の場所において価格交渉をしなかった結果であり、それがいやなら市場取引・定価販売の場所で買えば良いからである。現地タクシーにぼられたと騒ぐ人も同類であり、それを避けるには市場取引・定価販売の公共交通バスに乗れば良い。自分の安直な行動を反省せず、現地の人や国に文句を言うのはお門違いではなかろうか。
 さて中国の超市には、かつての日本のスーパーマーケットには存在しなかった革命的存在のバーコードがある。全商品にバーコードが付き、レジではバーコード読取機を使って迅速かつ正確に価格を記憶・記録し、集計する。このおかげで世界中の大規模店舗では価格入力という労働が大幅に節約された。まさに労働節約的技術進歩の典型である。
 「バーコード革命」のおかげで、超市では教育水準が高くない人でもレジでの作業が簡単に行えるようになった。私は、沢山の客が行列する中国の超市において、バーコードがなければレジでは何か起きていたかを考えただけでゾーッとした。この点では米国も同様であり、沢山の商品をまとめ買いする客の行列を気にもとめず、レジ係が価格を毎回入力していたら、忍耐強く静かに並んだ米国人の血圧も相当上がってしまうのではないか。
 中国の超市には、もう1つの近代化の象徴がある。それは磁気やICチップを使ったカードでの支払いである。超市へ行くにはコスト(往復時間)を要することや店内ではワンストップ・ショッピングができることから、顧客は比較的多くの商品を購入することとなり、結果として支払金額も比較的大きくなる。大金を持ち歩くのは面倒であるだけでなく物騒でもある。そこでデビット(即時払い)やクレジット(後払い)の機能を持ったカードの使用ということになる。店側としても、現金処理コストが削減できるだけでなく、増大する偽札チェックに悩む必要もないのでカード利用は大歓迎である(中国では100元紙幣を差し出すと、どの店でも必ず偽札チェックを受ける)。
 中国の超市では、国内主要銀行が参加している中国銀聯(China UnionPay)のデビッドカードを使う人をよく見かける。中国人民銀行の報告書(『2009年第二季度支付体系運行総体情况』2009年9月16日発表)によると、2009年6月末時点での銀聯ネットワーク参加機関は、中国内206、国外41の計247機関となっている。日本では、三井住友カードとの提携により、三井住友銀聯カードが発行されており、日本国内で銀聯カードを利用できる店舗が増大している。
 上記報告書によると、2009年6月末現在、中国内の銀行カード発行枚数は19億7934万枚、うちデビット(借記)カードは18億1672万枚、クレジット(信用)カードは1億6262万枚であるという。1人平均所有カード枚数は1.49枚であるが、北京では平均6.24枚、上海では平均4.93枚、天津では平均4.32枚となっており、経済発達地区でのカード発行枚数が相対的に多い。したがって、所得水準の上昇と共に、中国におけるカード利用機会・利用回数が今後ますます増大すると予想される。
 超市におけるカード利用は、中国の近代化と経済発展の象徴であり、所得水準の向上を示す証でもある。


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